Vol.7 花の咲うように (4)


 華やかだがしっとりと落ち着いている店内に、話し声や笑い声が満ちている。
 BGMはジャズピアノで、生演奏だ。この店のピアニストは歌もかなりのものなので、3曲ほどのライブをひと晩で3回行っている。現在その2回目が始まるところで、店中の注目を集めていた。
 そんな中、フロアにいたホステスが男性店員に呼ばれて立ち上がった。
 胸元の開いた黒いドレスの裾を翻し、店員の誘導に従って入口までやってくると、そこには品のいいスーツにトレンチコートを肩に引っ掛けた男が1人、彼女を待っていた。
「こんばんは、東子ちゃん」
「氷上さん」
 気安げな笑顔に変わった東子が小走りに氷上のそばに近寄った。
「いらっしゃいませ。今夜はお1人ですか?」
「ああ、ちょっと君に用事があって」
「あたしに?」
 古賀沢組の幹部の中でも若頭に次ぐポジションにいる氷上がたった1人で何を告げに来たというのか。
 東子は首をひねったが、自分からは問わずに氷上の言葉を待った。
「――今日の午後、四代目が拉致された。格も一緒だ」
「――…え……?」
「格を車に乗せて、神之倉との待ち合わせ場所の近くまで送っていくところだった。すべて俺の責任だ。すまない」
 氷上ははっきりとそう告げると、深く頭を下げた。
「ちょ…っと待って――拉致って、どうして? どこの誰がそんな…?」
 突然のことに、東子は混乱して尋ねた。冷静に話を聞こうと努めたが、音をたてるように血の気が引いた。
 東子の求めるまま、氷上は事の経緯を説明した。組や個人の面子はまるで無視して、全面的に自分たちが悪いのだと言う。しかし、警察沙汰にはしないでくれと氷上は頼んだ。
「君に黙っているわけにはいかないから伝えに来たが、このカタは俺たちがてめえでつけなきゃならないんだ。心配するなと言っても無理だとわかってる。だが、必ず救い出すから、俺たちに任せてほしい」
「――」
「勝手なことを言っているのは重々承知している。東子ちゃんが警察に届けると言うのなら止めない。その権利は俺らにはないからな」
 東子は黙って氷上を見上げた。
 組の都合も、もちろんある。極道として、組長が連れ去られたことの落とし前を自分たち以外の手に委ねるわけにはいかないのだろうということは、東子にも想像がついた。
 だが「助ける」というのが誠意を持っての言葉だということも、そのまなざしで判った。東子が警察の介入を望むなら止めないという潔さも本物だ。
「……格に危険は…?」
「神之倉が下手な対応をしなけりゃ大丈夫だ。それに四代目がそばにいれば、みすみす格を危険な目にあわせるようなことはないだろう」
 2人の置かれている状況が不確かであっても、それだけは確信できた。蒔麻は、格を守るためなら体を張るだろう。
 蒔麻にとって格が大切な存在だというのもあるが、極道同士の争い事には堅気の人間を巻き込まないというのが、蒔麻の、そして古賀沢の主義だからだ。
 守るべきものを守るためには自身の傷など厭わないその姿勢が、蒔麻の“頭”たる証しであり、古賀沢の組員たちに慕われている理由のひとつでもある。
「――信じる。士朗さんや氷上さんを信じるわ。おまかせします」
 東子は氷上に向かって笑みを浮かべて見せた。無理やり作った笑みではあったが、その瞳は信頼を込めて真っ直ぐに氷上を見ている。
「格のこと、よろしくお願いします」
「ああ」
 両手を体の前で組み深々と頭を下げた東子に、氷上はしっかりと頷いた。
「状況は知らせる。ひとりで辛い時は、うちの事務所でよければおいで」
「え?」
「独りきりで待つのは気が滅入るだろう。うちのむさ苦しい連中でも話し相手くらいにはなる。動きがあればすぐに情報も入るしな。迎えを寄越すから、その気になったらいつでも連絡するといい」
 組のトップを連れ去られて組員も気が立っているだろう。格が関わっているとはいっても、東子は組の関係者ではない。それなのに氷上は、事務所に来いと言う。
 おざなりな口だけの慰めではなく、独りただ待たなくてはならないことを慮ってくれての言葉だと、東子は感じた。
「……うん。ありがとう、氷上さん」
「それじゃあ」
「氷上さん」
 踵を返して去りかけた氷上を、東子が呼び止めた。
「蒔麻さんを――早く助けてあげて」
 懇願する瞳が強い光を湛えていた。
 格抜きでも蒔麻と東子は仲がいい。知り合って1年も経っていない2人だが大層気が合い、長年付き合ってきた友人同士のようだった。それだけに、格に対するのとはまた別の不安と心配があるのだろう。
「――必ず」
 肩越しに振り返った氷上は、短い言葉で強くきっぱりと答えた。

 店から出て来た氷上に、待っていた組員たちが一斉に頭を下げた。
 肩に掛けたコートの裾で風を切り、氷上は車へと向かう。
 黒いセダンの脇に立って携帯電話を耳に当てていた佐伯が、それをスーツの内ポケットにしまい、氷上に一礼して後部座席のドアを開けた。
 氷上が乗り込むと他の組員たちも次々に乗車し、氷上を乗せたセダンともう2台は、通行人が通りすがりに遠巻きにしてチラチラと寄越す視線から離れて走り出した。
「事務所から、桐野の本日の動向について連絡がありました」
 佐伯は氷上の隣りに座り、乗り込む際に氷上から受け取ったコートを丁寧に畳んでから言った。
 桐野組の二代目である桐野伸之にその息子・充洋の居場所を“訊ねる”べく、古賀沢は情報網と足を使ってその動向を調べていた。伸之の動向に加え、同時に充洋の居場所を探ってもいる。
 数々の情報網から得られる情報と、幾手かに散らして探りを入れさせている組員たちからの報告が、事務所に送られて来る。それを神之倉がふるいにかけて必要な情報だけを抽出していた。
 本来ならば神之倉と氷上の役割は逆だが、今回のように氷上が動くべき時はポジションチェンジもありうる。
「20時より横尾組の組長と会食だそうです。場所は赤坂の《多岐川》」
 氷上はちらりと腕時計を見やった。20時半を過ぎたばかりだ。
 何の目的での会食かわからないが、氷上の知る限り、桐野組と横尾組は関係が悪いわけではなく、むしろ親交が深い。単に酒食を共にするためだけであってもなんらかの話し合いでも、1時間では済まないだろう。
 まだ間に合う。
 《多岐川》は氷上も何度か利用したことがある割烹なので、話もつけやすい。
「すぐに向かえ」
「はい。木暮」
 氷上の指示に頷いて、佐伯は運転席に向かって声をかけた。
「赤坂、外堀通りだ」
「了解」
 指示を受けた木暮はすぐさまハンドルを切った。最短ルートがすでに頭にあるのか迷いがない。
 氷上はヘッドライトの明かりの行き交う車外に目を遣り、これからのことを考えた。
 事務所を送り出された時点で、どういう手で情報を聞き出すかは氷上に一任されている。
 情報を得るだけでなく、牽制しておく必要があった。桐野がどこまで息子のしていることに関わっているか今の時点では不明だが、距離を取らせるよう圧力をかけ、充洋への助力を断つのが望ましい。
 しかし、それが古賀沢にとってマイナスに出ては困るのだ。匙加減を間違えてはならない。
 氷上は深く息を吸い込み、その百戦錬磨の唇からゆっくりと吐き出した。


 いま、何時なんだろう…――
 格は虚空を見上げてぼんやりと思った。
 時計がないだけならまだしも、窓がないので空の明るさで判断することも出来ない。空腹の峠は過ぎてしまい、腹時計もあてにならなかった。
「格くん、大丈夫? 辛くない?」
 隣りの蒔麻が格に話しかけた。
 覗き込んでくる蒔麻の目を見たら、わけもなくゆらゆらと揺れる気持ちが少し落ち着いた。
「…うん、大丈夫。蒔麻さんこそ床冷たくない? 平気?」
 手足の冷えが体に良くないことは知っている。黒いタイツをはいてはいるがコンクリートの床の上にミニスカートで座っているので、心配になって格は訊ね返した。
「大丈夫よ。少し話そうか。時間がわからないと不安になるでしょ」
「……そっか、この感じ…だからなのか」
 蒔麻の言葉に、格は納得がいったように頷いた。
 ここに来てどのくらい経ったのか、いまどういう状況なのか、それが全くわからない。充洋が放っておけと言った通り、誰もここに来ないからだ。
 蛍光灯が時折じりじりと音をたてるほかは足音も話声もせず、蒔麻と2人で縛られたまま放置されている。
 放っておかれればそれはそれで、あれこれと取り留めもないことを考えてしまい、やがてそれにも飽きてきた。神之倉や氷上がいずれ来てくれると信じて疑わないが、それがいつなのか、どれくらい待てばいいのか見当もつかない。時間の感覚がないぶん心の足場もゆらゆらと揺れる。
「時間って目標にするにはいいんだな、やっぱ。あとどれくらいとかどこまでってわかればそこを目指せるけど、時間がわかんないとアタマぼーっとしてくる」
「そのあたりも計算してるのかもね。さすがに手慣れてるわ」
「……いつもこんなことしてるヤツなの?」
「わからないけど、良くない噂はいろいろ聞くわ」
 蒔麻はそれ以上語ろうとはしなかったが、なんとなく想像はついた。
 桐野充洋はサディストだと、氷上が言っていた。
 そして充洋の下についているらしき男達は「嬲った時に泣いて許しを乞うような女が好み」だというようなことを口にしていた。
 つまり、そういうことが実際に行われているということだ。
 幸いと言っていいのかどうか、蒔麻の強さは充洋の好みではないらしい。そしてさらに、鎌倉の御大・神宮寺茂生の存在がある。
 気を失ったままのふりをして聞いた会話でも出てきたが、蒔麻が鎌倉の御大に気に入られているという事実がある限り、蒔麻に危険はないだろう。
 格にとっては年の離れた――離れ過ぎてはいるが――気の合う友人でしかない神宮寺だが、その名だけで数多くの極道が頭を垂れる。
「格くん?」
「ん? うん、シゲじいってやっぱり怖い存在なんだなーと思って」
「…そうね。でも――大抵は勘違いされてるみたいね」
「かんちがい?」
 苦笑した蒔麻に、格は首をひねった。蒔麻は視線を落として記憶の糸を手繰るように話し出す。
「後継にと推された時に御大から訊かれたわ。おれはお前が継ぐのがいいと思うが、お前にその覚悟はあるか…って」
 死ぬまでとは言わねえ。だが、五代目に組を引き渡す時まではお前は古賀沢の頭だ。
 お飾りでないならなおさら、すべてはお前が背負わなきゃならねえ。
 その覚悟ができねえなら、無理だと言いな――
 蒔麻は時間が欲しいと答えた。神宮寺は3日だけ待つと言い、蒔麻は3日間ほとんど眠らずに考えた。
 結局、蒔麻を四代目にと望む組員たちの思いと、何より神之倉と氷上からの「最後の最後まで共に在る」という言葉で、蒔麻は四代目を継ぐと決めた。
 そして蒔麻は、神宮寺の言葉を心に刻み込んだ。
 古賀沢組組長としてでない蒔麻個人としての付き合いやオフの日もなくはない。しかし古賀沢に何かあれば、その場にいようがいなかろうが、知っていようが知るまいが、すべて蒔麻が背負う。
「今日のことだってね、不覚を取ったのは私の責任で、事を構えるにしたって私の喧嘩だわ。たとえ何が起きようと私から御大に泣きついたりしない。何も言わなくても御大は気付くかもしれないけど、当事者が望まない助力をする方ではないわ」
「それが蒔麻さんでも…?」
「たぶん――わからないけど、そう思うことにしてる」
 神宮寺の心中を読み切れる人間など1人としていないだろう。
 不可侵な、絶対なる孤高――半世紀以上を極道として生きて来た男の域には到底近付けない。
 たとえ神宮寺が蒔麻に手を差し延べてくれるとしても、蒔麻はそれに容易には手を伸ばさないと決めている。
 強靭な命綱があれば、土壇場でそれに甘えてしまう。ないものと思い自力で進まなくては、強くなどいられない。
 神之倉や氷上が神宮寺と違うのは、彼らは共に歩いてくれているということだ。蒔麻を古賀沢組の頭として立たせるために両脇にいる。
 蒔麻が崩れれば彼らも道連れになる。だから蒔麻は、彼らのためにも自力で立てるようでなければならないと思っていた。
「いーい話きいちゃったー」
 ふいに、男の声が降って来た。
 あまりにも突然のそれに、格も蒔麻もびくんと肩を震わせる。
 いつの間にかドアが開いていて、白いスーツの若い男が部屋に入って来ていた。その背後には、白スーツよりはいくぶん年長に見える黒スーツがいる。白スーツはケンジと呼ばれていた男だ。
 あらためて声以外に姿も目にして、2人ともあの峠にいたことを格は思い出した。
「鎌倉のじーさんが動かないなら別に怖いもんないじゃん」
 ケンジはニヤニヤと笑みを浮かべながら近付いて来た。
 その目付きがどこかおかしいことに気付いた格が警戒して身構え、そんな格をかばうように蒔麻が格の前に出る。
「いいのか?」
「殺っちゃわなきゃ平気だろ」
 黒スーツの問いに軽く答えたケンジは蒔麻に近寄ってしゃがみ込むと、その足に手を伸ばした。
「あんた、あのじーさん咥え込んで組長になったんでしょ?」
「……ッ」
 膝を撫でてスカートの隙間から忍び込んで来た手に、蒔麻は一瞬だけ表情を強張らせた。太腿で止めたそれを引き戻し、ケンジがニヤリと笑う。
「触んな!」
 それにカッとなった格が声を荒げたが、ケンジは一瞥を寄越しただけで相手にしようとせず、蒔麻に向かってニッコリと笑いかけた。
「ま、安心してよ。充洋サンのお許しが出るまで、殴ったり突っ込んだりはしねえからさ」
 ケンジはどこからか取り出したナイフで蒔麻の足首を拘束するロープを切った。そして左足のブーツを脱がせ、爪先から上に向かってゆっくりと撫で上げる。
「触んなって言ってんだろうが!」
「るっさいなあ……浦部サン、そのガキつかまえといて」
 疎ましげにため息をついたケンジは、背後に立つ黒いスーツに告げて蒔麻に向き直った。蒔麻は怯む様子は見せずにケンジの視線を受け止めて睨み返す。
「充洋サンはやめて許して〜って泣きわめく女が好きだけど、俺はどっちかっていうと気の強い女の方が好きなんだよね」
 ケンジの指先が黒いタイツの膝の上あたりをつまみ上げて、その場所にナイフの切っ先を押しつけた。ぷつりと小さな音がして、ケンジがさらに手を引くと腿の上に亀裂が走り、その隙間から肌色が覗いた。そのままナイフはスカートの中に入り、黒い布地は左足の付け根に向かって切り裂かれていく。
「蒔麻さ…っ離せ!」
 続いて上着にも手を伸ばしたケンジに、格は焦って身を捩った。だが、浦部と呼ばれた男に羽交い締めにされて動けない。
 手足の自由を奪われた上に背後から押さえ付けられてしまうと、力ではどうしようもなかった。しかし、逃れる方法がないこともない。
 格はいったん首を前に倒し、勢いをつけて背後にいる浦部の顔に後頭部を打ち当てた。
「…が……ッ」
 鮮血が散り、腕が緩んだ。
 その隙に蒔麻の元に向かおうとした格の襟首を、浦部の手が引っ掴む。
「…っのガキがぁッ!」
 引き戻された格の体が無理矢理立たされる。そして力任せに放り投げられ、積み上げてあった段ボールの山に勢いよく突っ込んだ。崩れた山がバラバラと格に降りかかる。
「格くん!」
 蒔麻が咄嗟に振り返り、同時に体を後ろに倒した。倒れながら膝でナイフを持つ手を強かに蹴り上げ、もう片方の足でケンジの胸を思い切り突く。
 蒔麻の体が後方にくるりと一回転し、膝を着いた蒔麻はすぐさま立ち上がって格の元に向かった。
 胸部に蹴りを食らってもんどり打ったケンジは、ゲホゲホと咳き込みながら体を起こす。蒔麻を睨み付けた目が爛々と輝き、どこか恍惚としていた。落ちたナイフを手探りで再び掴み、ゆらりと立ち上がる。
「格くん! 大丈夫!?」
 蒔麻は段ボールを肩で押し退けながら格に呼び掛けた。幸い上になっている段ボールには何も入っておらず、重たいものが格を直撃した様子はない。
「――…大丈夫」
 段ボールの山が動き、格が顔を出した。両手足の自由が利かないため容易に起き上がれそうにないが、怪我はないようだと見て取って蒔麻はほっと息を吐いた。
 そんな蒔麻に視線をやった格の顔に緊張が走る。
「蒔麻さん後ろ…ッ!」
「え――…っ」
 蒔麻が振り向いた時には、それはすぐ背後にまで迫って来ていた。
 身構える余裕も与えずに近付いたケンジの腕が蒔麻を突き倒し、蒔麻もろともコンクリートの床に崩れる。
 後ろ手に縛られたまま組み敷かれ、胸のふくらみを乱暴に鷲掴みにされて、蒔麻の顔が苦痛に歪んだ。
「蒔麻さんッ」
 格は身を捩って声を上げた。がっちりと縛られている手や足だけでなく、体全体が思うように動かず鉛のように重い。
 ケンジの握るナイフの先端が、蒔麻の脇腹の一点に当てられた。
「ここから突き込むとさ、痛えけど死ねないんだよ。知ってる、組長サン?」
 ケンジの眼は焦点が合っておらず、充血していた。口を開けて荒く息をし、乾いた唇を舌先で湿らす。
 激昂している状態だからというだけではない。明らかに、平常の状態とは違う。
 それに気付いた蒔麻は、冷たいものが背中を伝うのを感じた。逃れなければと本能が告げる。
「鎌倉のじーさんにするみてえにオレのも下の口で喰ってくれよ。ヤりながら、こいつも突っ込んでやっから」
 ケンジは楽しそうに笑ってナイフを翳して見せ、蒔麻の膝を強引に割った。
「やめろ! やめ…っ…ちくしょう…ッ!」
 助けるどころか動くことさえ出来ないもどかしさと悔しさに、格はギリギリと奥歯を噛み締めた。
 このまま見ているわけにはいかない。諦めたくない。なんとしても蒔麻を助けなくては。
 格は腹に力を入れて強引に上体を上げ、崩れた段ボールの山に乗り上げるようにして体を起こした。
 だが次の瞬間、鈍い音が響いたかと思うと、格の視線の先でケンジの体がぐらりと揺れた。そしてケンジは、蒔麻の体の脇に崩れるように倒れて転がった。
 その背後に、無精髭の男を伴った充洋が立っている。充洋は大儀そうにため息をついて、手にした鉄パイプをコンクリートの床に放り投げた。
 カラン、と甲高い音を立てて転がったそれを、格は呆然としつつ目で追った。
 想像すらしなかった救援者だった。制止の言葉をかけもせずに鉄パイプで殴り付けたことはともかく、自分の部下に対してひどく面倒くさそうに、そして無感動に為していることに、嫌悪とうそ寒さを感じる。
「浦部。てめえ、こいつにヤク渡したな? 渡すなって言ったろうが」
「…そんな――ただのクサですよ、崎谷さん。たまにやるくらい、どうってことないでしょう」
「馬鹿野郎!」
 崎谷と呼ばれた無精髭の男は怒鳴りつけるとつかつかと歩み寄り、鼻血をあえしたままの浦部を殴り飛ばした。
「シャブでもヘロでもクサでもこいつは暴走するんだよ。こうなったらしばらく狂犬のままだぞ」
 苦々しく吐き捨てた崎谷は非難がましい視線を浦部に送り、それからケンジに目を移した。
 そのケンジの脇に立った充洋と、すでにケンジの体の下から逃れて距離をとった蒔麻とが静かに睨み合っている。
「神之倉が来るまで指1本触らないと言っちまったんだがな――ま、俺が触ったんじゃないが」
 充洋は他人事のように言って、蒔麻の姿をしげしげと眺めた。
 薄汚れたコンクリートの床でコートは黒く汚れ、ところどころ肌色が覗いている左足を含めたむき出しの素肌の部分にも汚れた跡がある。後頭部でとめていた髪はほどけて乱れていた。
 しかし蒔麻は毅然とした態度を崩さなかった。背を伸ばし、充洋の無遠慮な視線を受け止めている。
「気の強い女は好きじゃないが、素敵な眺めだな」
「…飼い犬はちゃんと躾たほうがいいわよ」
 蒔麻は充洋の言葉には動じず、倒れているケンジに少しだけ視線をやって言った。
 心拍数の上昇、目の充血、口や喉の渇き――明らかに大麻の吸引による症状だ。いつまでも続くわけではない恍惚状態を求めて常用するようになれば、確実に心身に支障を来す。
 古賀沢では組の方針もあって扱わないが、しのぎとしての麻薬の売買は珍しいものではない。むしろ、それを最大の収入源としている組織もある。
 街中で簡単にドラッグが手に入る世の中だ。当然、ヤクザ者が使用することも珍しいことではなかった。だが、ヤクザとは一家という“組織”である。組織の中に酩酊状態や錯乱状態で制御のきかない者がいることは、好ましいとは言えなかった。
 蒔麻は、意識のないふりをして聴いていた会話を思い出す。物騒なことを笑いながらしゃべっていたケンジは、普段から暴走しがちのようだ。崎谷が浦部に放った言葉からも、ケンジの暴走がさらに制御し難くなるのは避けたいらしい。
「浦部。こいつを連れていけ」
 充洋は蒔麻の皮肉を無視して、鼻血を拭っている浦部に言った。
 背中を向けたままの充洋から見えないのをいいことに厭そうな顔をした浦部だが、代わりに崎谷に睨み付けられて身を縮める。
 そして浦部は、気を失ったケンジを肩に担ぎ上げるとそそくさと部屋から出ていった。
 束の間、部屋に沈黙が満ちる。
 それを破ったのは充洋だった。
「で、本当のところはどうなんだ? やっぱり咥え込んだのか?」
 視線のみならず言葉も直截にすぎるほど遠慮なく飛んだ。蒔麻に対してあまりにも失礼だと格は思ったが、蒔麻はそんな言葉くらいでは動揺しなかった。
「――愚問ね。そんなことくらいで動いてくれるような方ではないわよ」
 笑みまで浮かべて蒔麻は断言した。
 神宮寺は色仕掛け程度で思惑を左右できるような甘い男ではない。それがどんな相手であれ、自分を失うことはないだろう。
 四代目を襲名した当初はやっかみもあっていろいろと噂されたが、蒔麻は神宮寺を頼ることも、ましてやいま充洋が口にしたようなことをやろうと思ったこともなかった。
 実際、組長になってから特別に優遇されたことはない。古賀沢の荻生会での地位は変わらず、神宮寺によって組の実入りに良い変化があったこともなかった。
 鎌倉の邸宅に呼ばれることも食事を共にすることもあるが、それだけだ。
 うつむくような恥ずべきことも、後ろ指をさされるようなこともしていない。
 考えに考えて、自分で決めて、今の蒔麻がいる。
「それで? わざわざ盗み聞きなんてお行儀の悪いことをしに来ただけ?」
「まさか」
 挑発ともとれる蒔麻の物言いを、充洋は冷笑で受け流した。
 圧倒的に不利な状況で真っ向から充洋に向かう蒔麻を、格はハラハラしながら見守った。
「私を助ける必要もなかったはずだけど」
「古賀沢と揉める気はないんでね」
「よく言うわ」
 いけしゃあしゃあと言い放った充洋に、蒔麻は呆れたように苦笑してため息をつく。一家の組長を連れ去った時点ですでに喧嘩を売ったに等しい。
「神之倉とサシで話がしたいだけだ。あんたがいれば奴は出てくるだろう?」
「こんなことをして、それでも神之倉があなたのところに来ると思ってるの?」
「あんたと引き換えにな」
「私の代わりに神之倉を拘束しても、それと桐野に行くのは別の話よ」
「来させるさ。力ずくで」
 充洋の薄い唇に笑みが浮いた。何を思うのか陶然としてさえいて、その笑みのもたらすものに格は我知らず寒気を覚えた。
「……神之倉は泣いて許しを乞うような男じゃないわよ」
「ああ…何をされても絶対に屈しないだろうな。辱められても、血まみれになっても、死ぬまで立っている男だ」
「わかっているなら――」
「だからなおさら征服欲をかき立てるんだよ。どんなことをしてでも欲しい。手に入れて、どうやって従わせようか、考えるだけでゾクゾクする。ヤクづけにしようか、それとも――」
「そ…」
「ダメだッ」
 顔をしかめて言い返そうとした蒔麻の声に、別の声がかぶった。それまで黙っていた格が叫んだのだ。
「そんなのダメだ――」
 蒔麻の邪魔にならないように黙っていようと、格は思っていた。だが、黙っていられなかった。
 格が以前住んでいた東京のマンションの周辺には堅気の生業でない住人も多く、重症ではなかったが薬物常用者もいた。ついさっき、薬物で常態ではない男も目にした。
 神之倉にはそんな姿は似つかわしくない。
 それに、薬で従わせてもそれは神之倉ではない。意思も行動も、全てを自ら選んでこそ神之倉士朗として存在するのだ。
「……なんなんだ、このガキは?」
 充洋は、いま初めて格を認識したかのように視線をやって蒔麻に尋ねた。
「私の友人の子よ。手を出さないで」
 それだけの関係ではないが、間違ってもいない。さらりと返したのは、変に含みをもたせれば深読みされる恐れがあるからだ。
 重要な鍵を握っている存在と思われるよりは――実際、神之倉に対しては特に重要な存在なのだが――あっさりと事実を答えた方がいい。
 充洋は格に歩み寄り身を屈めると、手を伸ばして格の顎を掴み、無理やりに上向けた。
「俺にはガキに手を出す趣味はないし、この眼も気に食わないが――」
 蔑むように見下ろして、充洋は抑揚のない声で言った。その声も、格に触れる指先も、ひやりと冷たい。
「見てくれは整ってるから老若男女問わず気に入る奴は幾人もいそうだな。体も丈夫そうだ」
 値踏みをするような視線に、格は自分の意思に反して体が強張るのを感じた。
 人間をモノとして眺めている眼だ。これほど無遠慮な、そして酷薄な視線を格は知らない。
「その手を離しなさい!」
 鋭い声が飛んだ。
 固まったまま逃れられない格から、充洋の手が離れてゆく。
 斬りつけるような怒声を浴びせた蒔麻は、険しい視線を充洋に向けて繰り返す。
「手を出すなと言ったはずよ。離れなさい」
 蒔麻が何を言ったところで充洋は好きなように出来た。縛られ、助け手もいない蒔麻にできる抵抗などごく僅かだ。
 だが充洋は、思いの外おとなしく蒔麻の言葉に従った。その声に、組織を統べる者の覚悟と迫力があったからだ。
 蒔麻は、格に何かあれば古賀沢として桐野を潰すつもりでいた。それが、格を巻き込んでしまったことに対する蒔麻なりの落とし前だ。もちろん格が大事だというのもあるが、それだけではない。
「――神之倉は渡さないわ」
 格から離れた充洋に、蒔麻は改めて宣言した。充洋は不機嫌な表情を隠しもせずに蒔麻を見る。
「あんたの了解がいるわけ?」
「あたりまえでしょう。神之倉は、古賀沢の盃を受けた古賀沢の人間よ」
「古いんだよな、その、盃だなんだってのが」
 充洋はむしろ哀れむような顔をして首を振った。
「それじゃあ聞くけど、あなたの考える組と組員の結び付きって何なのかしら?」
「恐怖。それと評価だな。ヒトは自分より強いものに恐怖で従い、強者に評価されることによって働き場所を得る」
 自信に満ちた声で充洋は即答した。その表情には一切の逡巡はない。
「神之倉はおとなしく飼い殺されて終わる男じゃない。力と恐怖を体現して、それを知らしめることの出来る男だ。女の後ろに控えているなんて、もったいないことこの上ない。俺の桐野組にはあいつが欠かせないんだ」
 充洋の声が熱を帯びた。自分に向けた無機質な冷たい声との違いに格は驚いた。こんな男に執着されている神之倉の難儀を思い、眉を寄せる。
 蒔麻が言うには、神之倉はその都度きちんと断りを入れているという。それでも諦めきれないというのならわかる。しかし充洋は、諦めきれないというよりは神之倉が「ノー」と言うとは考えてもいないように見えた。
 この根拠のない自信はどこから来るのだろう。意思の疎通も何もあったものではない。
「夕方、48時間以内に来いと伝えておいた。あいつのことだ、明日にはここを探し当てて来るだろう。だが、古賀沢に戻ることはない」
 蒔麻は、あまりにも自信たっぷりに放たれるそれに言い返さなかった。呆れて声もなかったのかもしれない。
 言うだけ言って満足したのか、まるで興味を失ったかのように充洋は踵を返した。
 そして充洋と彼に続いた崎谷は、蒔麻と格をそのままに部屋を出ていった。
 ――神之倉が来る。
 充洋に言われるまでもなく、来るということを格は確信していた。
 蒔麻を助けに、必ず来る。
 その時自分には何が出来るのか格は考えたが、神之倉の邪魔をしないよう、足手まといにならないようにおとなしくしているしかなさそうだった。
 氷上をひとり残して逃げなくてはならなかった時も、蒔麻がケンジに襲われた時も、蒔麻のひと言で充洋の手から解放された時もそうだ。結局、現在
(いま)の格に出来ることはそう多くない。
 蒔麻は、積み重ねていけばいいと言ってくれた。たしかにそれしかないのだろう。
 だが、悔しかった。神之倉を好きになった時よりはるかに強く、早く大人になりたいと思った。
 重荷ではなく、力になりたい。いますぐに。
 だが、ひと息に年を取れるような便利なモノはこの世にない。
「…格くん、怪我はない?」
 充洋たちの去った先を油断なく見つめ続け、足音が完全に遠ざかってから、蒔麻は格を振り返って尋ねた。
「うん、ない……」
「格くん? どうしたの?」
 沈んだ様子の格に、蒔麻は表情を曇らせて首をかしげた。
 格は慌てて笑顔を作り、何でもないと首を振った。蒔麻に心配をかけたくない。
 それでも格の方に寄って来た蒔麻を、格は押し止どめた。
「格くん?」
「ちょっとそっち向いてて」
「? なに?」
「手」
 それだけ言って格はにじり寄り、背を向けた蒔麻の血が滲んで砂に汚れた手をぺろりと舐め上げた。
「…っ格く――!?」
「けっこう血ィ出てるし、砂も付いてる。士朗や氷上が来るまでほっとけねえよ」
 押し倒された時に負った傷だろう。深い裂傷ではないが、広範囲に擦り剥けているのでかなり痛そうに見える。せめて傷口を洗い流せればいいのだが、それは叶わない。
「そんなことしなくていいから!」
「ダメ」
「……じゃあ、砂も血も飲み込まないで吐き出して」
「ん」
 格はそれには頷いて、血と砂の混じった唾液をコンクリートの床に吐き捨てた。
 そうして、傷の周辺の汚れを落としてやっと顔を上げた格を、体の向きを変えた蒔麻が覗き込む。やはり、沈んでいたようなのが気にかかった。
「……格くん?」
「…他に怪我してない?」
「え? うん、あとはあちこち破れたくらいで何とも――」
 蒔麻は改めて自分の首から下を見下ろした。どこかしらぶつけたりはしているだろうが、酷く痛むところはない。タイツの裂けてしまった左足も見てみたが、血の流れるような傷は他には見当たらなかった。
 そうして視線を上げると、何故か格が体ごと顔を背けようとしていた。
「どうしたの?」
「……あし……」
「あし?」
 不思議そうに自分の足を見下ろし、首をひねってまた顔を上げる。
 蒔麻から見える格の頬に朱が差していた。
「ええと……もしかして、この足?」
 格ならこの程度の露出は気にしないだろうと思っていた蒔麻は、意外な反応に驚いて尋ねた。
「……東子は風呂上がりにバスタオル1枚で歩いてたりするけど母親だし、東子の仕事仲間が布面積少ない服着てても仕事着だから気になんなかったけど……それ…なんか、モロに見えてるより困る――」
 蒔麻はもう一度自分の足を見下ろし、なるほどと思った。
 右足は移動する際にどこかに引っかけたらしくところどころ破れて穴が開いていて、左足はナイフで切られた膝から上にかけてがぱっくりと裂けている。そして、スカートの左側は深いスリットになってしまっていた。
 コート以外黒ずくめなので、むき出しの大腿部は目立つ。スカートの裂け目も、辛うじて見えるに至っていないその奥が、動き方によっては見えてしまうだろう深さだ。
 短いスカートをはいた蒔麻の姿を格が見るのは、今日が初めてだった。見慣れないそれに加えて、通常ではあり得ないこの露出の仕方はさらに慣れないものなのだろう。
 年齢の割に大人すぎるほど大人な言動をするのに、晒された足に顔を赤らめる。そんな格が可愛いと思う。
「…それじゃあ、これでいい? よければこっち向いて」
 蒔麻は右半身を格に向けるようにして座り直して問いかけた。格は肩越しに振り返り、蒔麻の懇願に応えてもぞもぞと体勢を変えた。
 蒔麻と同じ方向を向いて足を投げ出した格が、小さく息をつく。後ろ手に縛られて足も自由にならならないという状態では体もきつい。喜ばしくない経緯だったが、足の戒めだけでも解けた蒔麻の方が幾分楽だろう。
「つらい? もう少し我慢してね」
「ん、大丈夫」
 格は気丈に応じたが、その顔には疲れが見え始めている。
「……シゲじいの話だけどさ」
「うん?」
「思ったんだけど――古賀沢の喧嘩は助けてくれなくても、それが蒔麻さんって1人の女の人のためなら、たぶんシゲじいはどんなことでもしてくれると思うよ?」
 蒔麻は、そうだとも違うとも答えずに、小さく微笑んだ。
 神宮寺が、実の娘か孫のように接する蒔麻と、古賀沢の四代目としての蒔麻とをどう区分けしているのかわからない。古賀沢の四代目としての蒔麻への助力は求めない限りは無いと確信しているが、蒔麻個人としてはどうなのだろうか。
 わからないがしかし、ひとつだけ決めていることがある。
 古賀沢の皆のため、そして神宮寺のために、“古賀沢蒔麻”としても“古賀沢組四代目組長”としても、なにものにも屈することなく戻る。
 こんな馬鹿馬鹿しい喧嘩に負けるわけにはいかなかった。


 間接照明が薄暗い廊下を淡く照らしている。
 江戸前の魚を食べさせるこの割烹は、桐野の気に入りの一軒だ。
 今夜は昔馴染の横尾組の組長と久々に酒食を共にし、桐野組としても個人としても実のある話が出来た。いい酒といい肴で腹が満ちて気分も良い。
 桐野は、先に帰るという横尾を見送り、その帰途に小用に立ち寄った。
 だが、済ませて出て来ると、そこに待っていたはずの組員の姿がない。
 桐野は首をひねったが、深くは考えなかった。酒が入って気分が良かったこともあるが、組員が姿を消す重大な理由は思い当たらず、それが何か不穏なことに繋がるという発想もなかったからだ。
 大方電話でもしているか、先に部屋に帰ったのだろうと思い、1人でその場を離れた。
 そして、鼻歌を歌いながら元いた部屋へと戻った桐野は、不必要に華美にならず品のよい装飾の施された襖を開け一歩部屋に足を踏み入れて瞠目した。
 桐野を待っていたのは、この夜桐野について来ていた組員たちではなかった。
「どうぞ、桐野組長」
 つい数分前まで横尾が座っていた場所に端座した三十絡みの男は、慇懃に座卓の向かい側を手で示した。だが、立ち上がって迎える様子はまるでない。
 桐野は、この若い男を知っていた。直接の付き合いはないが、その名はよく耳にし、顔も何度か見ている。
 いったい何の用なのだと訝しく思いながら足を踏み出した桐野の体が完全に部屋に入ると、背後で襖が閉められた。驚いて振り返ると、襖の両脇に1人ずつ男が立っていた。明らかに堅気の人間ではない男たちだ。
 桐野はそこに至って腹を括った。若造に何が出来るのだと開き直って自分を鼓舞する。そして、端座する男の向かい側にどっかりと腰を下ろして男を睨み付けた。
「用があるなら筋を通したらどうだ?」
 不機嫌さを丸出しにして男に言った。アポイントもなしに突然やって来て人の部屋に無断で入り込むとは無礼極まりない。
 だが、相対した男は非礼を詫びるでもなく微笑んで、桐野に告げた。
「お伺いしたいことがあって来ました」
 男は笑っている。口調も穏やかだ。
 だが、眼鏡の奥の瞳に射ぬかれたかのように体が強張り、心臓がどくんと大きく跳ねた。
 桐野は我知らず、自分の膝頭をきつく鷲掴みにした。
「ご子息はいま、どちらに?」
 男は――氷上宏一は、ゆっくりと桐野に問い掛けた。


−続−



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